2022年11月にエンゼルスはドジャースをFAとなっていたタイラー・アンダーソン投手を獲得しました。(2022年12月で33歳)
3年3900万ドル(54億円)での契約となります。
アンダーソンは2022年にメジャートップの防御率であったドジャースの先発ローテーションの一人として15勝をあげる活躍をみせ、オールスターにも初めて出場しました。
変則左腕のアンダーソンは2022年をのぞくと大きな実績はありませんが、先発としての経験は豊富であり、先発の枚数が足りないエンゼルスには必要な補強だったと思います。
アンダーソンの経歴とメジャーでの成績
生年月日 | 1989/12/30 |
身長 | 188cm |
体重 | 99kg |
投手 | 左投左打 |
ドラフト | 2011年 1巡目(全体20位) |
メジャー成績
年 | 登板 | 回 | 勝 | 敗 | 防御率 | WHIP | K/9 | BB/9 |
2016 | 19 | 114.1 | 5 | 6 | 3.54 | 1.29 | 7.8 | 2.2 |
2017 | 17 | 86 | 6 | 6 | 4.81 | 1.33 | 8.5 | 2.7 |
2018 | 32 | 176 | 7 | 9 | 4.55 | 1.27 | 8.4 | 3.0 |
2019 | 5 | 20.2 | 0 | 3 | 11.76 | 2.13 | 10.0 | 4.8 |
2020 | 13 | 59.2 | 4 | 3 | 4.37 | 1.39 | 6.2 | 3.8 |
2021 | 31 | 167 | 7 | 11 | 4.53 | 1.25 | 7.2 | 2.1 |
2022 | 30 | 178.2 | 15 | 5 | 2.57 | 1.00 | 7.0 | 1.7 |
K/9=奪三振率、BB/9=与四球率
アンダーソンは2011年にロッキーズからドラフト1巡目(全体20位)で指名され、2016年にロッキーズでメジャーデビューしました。
デビュー年に好成績を収め、2018年にも規定投球回に到達するなどローテーションを担いましたが、ロッキーズでは度重なる左ひざの故障に苦しみました。
2019年にジャイアンツ、2021年にパイレーツ、マリナーズと複数の球団をわたり歩いて平均的な先発投手としての成績を残した後、2022年3月にドジャースとマイナー契約を結びました。
ドジャースでは4月後半から先発ローテーション入りし、178イニングで防御率2.57でリーグ5位となる15勝を挙げるなどキャリアハイとなる成績を残し、オールスターにも初選出されました。
アンダーソンは日本のエンゼルスファンの印象にも残っている選手だと思います。
2021年のマリナーズ時代にはシーズン終盤に2度エンゼルス戦に先発し、2試合で3.2イニングを投げ13失点と炎上しました。
特にシーズン最終戦はマリナーズの20年ぶりのポストシーズン進出がかかった大事な試合でしたが、大谷に先頭打者ホームランを打たれ球場の空気が冷えました。
<2021年シーズン最終戦に大谷にホームランを打たれるアンダーソン>
打って変わって2022年6月15日のエンゼルス戦では9回1アウトまでノーヒットノーランの好投をみせていましたが、大谷に3塁打を打たれて大記録達成とはなりませんでした。
<2022年9回1死までノーヒットノーラン>
※試合後に7回のウォルシュのピッチャーへのゴロ(動画6:17~)がエラーからヒットに訂正されたので、記録上は大谷が初ヒットではありません。
アンダーソンの選手としての特徴
球種
<2022年の平均球速>
マイル | キロ | |
ストレート | 90.7 | 146.0 |
チェンジアップ | 79.0 | 127.1 |
カットボール | 85.7 | 137.9 |
シンカー | 89.0 | 143.2 |
カーブ | 73.2 | 117.8 |
アンダーソンのベストボールは、ドジャース移籍後に割合を増やしたチェンジアップです。
チェンジアップの被打率は.179と低く、空振り率が37%と高いです。
ただ、アンダーソンは三振を取るタイプではなく、打たせて取るタイプです。
コントロールが良く、右バッターにはチェンジアップを、左バッターにはカットボールをそれぞれ外角低めのボールゾーンに投げて凡打を量産します。
ボール球のスイング率を表すチェイス率はメジャー上位5%となっています。
与四球率も低くイニングを消化でき、膝の故障から完全復帰した2020年以降は毎年ほぼ規定投球回ぐらいをこなしています。
<チェンジアップ>
Tyler Anderson, Filthy Changeups. 👌👌 pic.twitter.com/CxIvSWtm8Z
— Rob Friedman (@PitchingNinja) July 9, 2022
<ストレートとチェンジアップ>
Tyler Anderson, 90mph Fastball and 79mph Changeup, Overlay pic.twitter.com/kfmURgFtNg
— Rob Friedman (@PitchingNinja) August 26, 2022
2022年のアンダーソンは確変だったのか?
アンダーソンは2022年だけが特別いい成績なのが気がかりです。
ホームラン以外の打球の被打率を表す被BABIPが、2022年は.257とかなり低いです。
BABIPは短期的な運を示す指標で、投手の被BABIPは長い目で見ると.300ぐらいに収束するとされており、たしかにアンダーソンの他の年の被BABIPは.300に近くなっています。
したがって2022年のアンダーソンの成績は運が良かっただけの可能性があります。
しかし、BABIPは打球速度の影響も受けるとされており、強い打球を打たれなければ被BABIPは下がります。
2022年のアンダーソンは打球速度95マイル以上の被ハードヒット率がメジャー上位2%に位置しており、多少の上振れはあったにしても運だけでたまたま抑えていたのではないと思います。
まとめ
アンダーソンはキャリア前半は左ひざのケガに苦しみましたが、ケガの克服後は離脱もなく毎年安定して規定投球回ぐらいを投げられる先発投手です。
2022年だけが飛びぬけた成績なのでこの成績が継続されるとは思いませんが、ローテーションの枚数が足りないエンゼルスにとってふさわしい選手だと思います。
2023年が33歳のシーズンとなるベテラン左腕に3年契約は思い切った感じがしますが、ドジャースから1年1965万ドル(27億円)のオファーを受けていたことを考えれば、3年3900万ドル(54億円)での契約は安かったように見えます。
ただし、ドジャースからクオリファイング・オファーを受けていたアンダーソンを獲得したことで、エンゼルスは2年連続でドラフト2巡目の指名権を失うこととなりました(昨年はシンダーガードの獲得による)。
オホッピーをトレードで獲得するまでメジャーのプロスペクトランキング(若手有望ランキング)TOP100に誰も入らなかったエンゼルスは、お世辞にもマイナーが充実しているとは言えませんが、今が勝負のシーズンなのだという意思の表れなのかもしれません。
コメント