※2022年のエンゼルスの守備力はこちらから。
>> 2022年エンゼルスの守備は下手?守備指標UZR、DRS、OAAで確認
※本記事は前半戦終了時に書いたものですが、記事後半の各選手の守備のデータはシーズン終了時点のものに更新しています。データはFanGraphsから引用しています。
エンゼルスが上位に進出できない原因について、投手陣が槍玉にあげられます。
たしかに、チーム防御率はメジャー30球団で26位の4.90で、先発(防御率5.06)もリリーフ(防御率4.70) もどちらもひどいです。
しかし、実は失点は投手だけの責任ではなく、守備の影響も受けます。
そして、「UZR」という守備指標では、エンゼルスの守備は-21.3でメジャー30球団中で29位です。
UZRが-21.3とは、平均的なチームと比べて、守備のせいで21.3点多く失点しているという意味で、エンゼルスの守備が足を引っ張ていることがわかります。
このあと、エンゼルスの各選手の守備指標UZRを見て、エンゼルスで誰が守備が上手くて、誰が守備が下手なのかを確認していきます。
守備指標UZRとは?簡単な説明
- UZRは、同じ守備位置の平均的な選手と比較して、どれだけ失点を防いだかをスコアで示す守備指標
- UZRの平均はゼロ。プラスなら守備が上手い、マイナスなら守備が下手
- UZRのスコアは同ポジションの選手の比較でのみ使用可能
- 投手と捕手は対象外
計算方法の詳細はWikipediaをご覧ください。
また、UZRは「ARM」「DPR」「RngR」「ErrR」の4つに分類できます。
- ARM:外野手が送球でアウトにし進塁を防いだ時のスコア。肩の強さの指標
- DPR:内野手がどれだけダブルプレーを成立させたかのスコア
- RngR:どれだけ多くの打球を処理したかのスコア。守備範囲の指標
- ErrR:エラーが多いか少ないかのスコア
エンゼルスの各選手の守備指標
UZRは1つの打球ごとにスコアが加点(または減点)されていくものなので、出場試合数によってスコアに差が出ます。
出場試合数での差をなくすために、150試合あたりのUZRである「UZR/150」を利用して、各ポジションでのエンゼルスの選手の守備の良し悪しを見ていきます。
それでも出場試合数が少なすぎると正しく評価できません。
本記事ではそのポジションで100イニング以上出場している選手を掲載しますが、300イニング以下の選手はあまり参考としないでください。
内野。イグレシアスが下手
ファースト
ウォルシュのUZR/150は1.0で、平均的な守備力です。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
ウォルシュ | 1065 | 0.0 | 0.5 | 0.2 | 1.0 |
詳細を見ても各スコアともマイナス評価はなく、特別に上手いわけではないかもしれませんが、安定したプレーでチームに貢献しています。
※ウォルシュは2021年ア・リーグのゴールドグラブ賞の最終候補3人に選ばれました。
2021年シーズンの途中でエンゼルスからドジャースへ移籍したプホルスのUZR/150は-3.7でした。(ドジャースでの成績含む)
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
プホルス | 506 | -0.3 | -0.5 | -0.4 | -3.7 |
プホルスは守備の上手くない選手が多いファーストでも平均以下という評価です。
ゴセリンはファーストでの出場が300イニング以下なのでコメントしません。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
ゴセリン | 171 | – | 0.2 | 0.6 | 6.6 |
セカンド
フレッチャーは守備が上手い印象がありますが、UZR/150は-0.3で平均的でした。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
フレッチャー | 1211 | -0.6 | -0.9 | 1.1 | -0.3 |
ただ、UZRと同じ考え方から生まれているDRSという守備指標ではスコアが12で、メジャーで2番目に良い数値です。
フレッチャーの守備が上手いかどうかは評価が分かれるかもしれませんが、少なくとも下手ではありません。
※フレッチャーは2021年ア・リーグのゴールドグラブ賞の最終候補3人に選ばれました。
サード
レンドンのUZR/150は-0.3で平均的な守備力です。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
レンドン | 497 | -0.4 | -1.6 | 1.8 | -0.3 |
エラーが少なく、安定したプレーを見せていました。
守備範囲を示すRngRが低いですが、たびたび下半身のケガで離脱したシーズンだったので、ケガの影響もあったかもしれません。
メイフィールドのUZR/150は-0.2で平均的です。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
メイフィールド | 518 | -0.1 | 0.6 | -0.6 | -0.2 |
前半はエラーを連発していて、本記事でも「メイフィールドの守備は下手」としていました。
しかしシーズン終盤はプレーが安定し、スコアも平均値に戻ってきました。
ちなみにメイフィールドはマイナーではセカンドやショートでの出場が多い選手であり、サードは本職ではないと思います。
ゴセリンはサードでの出場が300イニング以下なのでコメントしません。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
ゴセリン | 209 | 0.1 | -1.5 | -0.6 | -16.0 |
ショート
イグレシアスといえば守備の名手として知られる選手ですが、UZR/150は-10.3で守備が非常に下手という評価になります。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
イグレシアス | 992 | -0.6 | -1.6 | -4.0 | -10.3 |
スコアはショートの中ではメジャー最下位で、特にエラーに関連するErrRの数字が悪いです。
今シーズンは華麗なプレーは健在な一方で、雑なプレーも多かった印象です。
派手な守備なのでプレーを見るのは楽しいですが、トータルでの守備のまずさが9月4日に戦力外となってしまった要因の1つかもしれません。
>> エンゼルスのショート・イグレシアスはなぜ試合に出ない?来季構想外か
レンヒーフォとフレッチャーは、ショートでの出場が300イニング以下なのでコメントしません。
イニング | DPR | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
レンヒーフォ | 227 | -0.1 | 1.8 | 0.7 | 10.0 |
フレッチャー | 145 | -0.6 | 0.3 | -0.5 | -6.4 |
外野。マーシュ以外下手
レフト
アプトンのUZR/150は-4.7で守備が下手です。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
アプトン | 687 | -1.1 | -1.4 | 0.0 | -4.7 |
チンタラ走ってふんわり返球しているイメージがありますが、肩の強さを示すARMと守備範囲を示すRngRがマイナスなので、実際その通りなのかもしれません。
ゴセリンのUZR/150は-7.7で守備が非常に下手です。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
ゴセリン | 302 | -1.9 | -0.5 | 0.3 | -7.7 |
ただしゴセリンはセカンドが本職であり、外野手として60イニング以上出場したのは今年が初めてでした。
アデルはレフトでの出場が300イニング以下なのでコメントしません。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
アデル | 158 | -1.8 | 0.1 | 0.2 | -6.7 |
センター
前半戦はケガのトラウトの代わりにセンターに入っていたラガレスですが、UZR/150は-4.7で守備が下手という評価です。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
ラガレス | 470 | -1.0 | -0.9 | 0.4 | -4.7 |
センターは守備の上手い選手が集まるポジションなので、上手い選手との比較になりますが、それでも2014年にゴールドグラブ賞を受賞したラガレスの悪い数字は意外でした。
後半戦からセンターに入っているマーシュのUZR/150は1.8で平均的な守備力です。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
マーシュ | 568 | -1.0 | 1.5 | 0.3 | 1.8 |
マーシュは守備範囲が広く、プレーを見ている限りでは安定感もあり、エンゼルスでは数少ない守備で信頼できる選手だと思います。
トラウトはセンターでの出場が300イニング以下なのでコメントしません。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
トラウト | 295 | -0.8 | 0.2 | 0.2 | -1.2 |
ライト
ウォードのUZR/150は-10.0で守備は非常に下手です。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
ウォード | 368 | -1.0 | -2.5 | 0.3 | -10.0 |
ウォードのところに打球が飛ぶとヒヤヒヤする人も多いと思いますが、その感覚は間違っていません。
打球判断があやしいところがあるので、それが守備範囲を示すRngRのマイナスに現れていると思います。
と言っても、ウォードはもともとキャッチャーだったので下手なのは仕方がないかもしれません。
イートンのUZR/150は1.0で平均的でした。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
イートン | 587 | -1.3 | 2.0 | -0.8 | 1.0 |
ただしエンゼルスでは167イニングの出場のみです。
前半戦のエンゼルスの外野の守備が壊滅だったために獲得されたと思われるイートンでしたが、若手のマーシュ・アデル起用の方針もあって8月16日に戦力外となりました。
ロハス、アデル、ラガレス、ウォルシュは、ライトでの出場が300イニング以下なのでコメントしません。
イニング | ARM | RngR | ErrR | UZR /150 |
|
ロハス | 169 | 1.4 | -2.3 | 0.2 | -4.0 |
アデル | 144 | 1.4 | -0.3 | 0.3 | 11.8 |
ラガレス | 230 | 1.0 | -1.4 | 0.3 | -3.7 |
ウォルシュ | 147 | -1.4 | -0.1 | -0.1 | -12.9 |
エンゼルスの守備まとめ
エンゼルスは守備が下手なチームです。
UZRでプラスの評価を受けている選手がウォルシュとマーシュぐらいしかいません。
特に守備が下手なのはショートのイグレシアス、レフトのゴセリン、ライトのウォードでした。
ポジション | 選手 | イニング | UZR | UZR /150 |
ファースト | ウォルシュ | 1065 | 0.7 | 1.0 |
ファースト | プホルス | 506 | -1.1 | -3.7 |
セカンド | フレッチャー | 1211 | -0.4 | -0.3 |
サード | レンドン | 497 | -0.2 | -0.3 |
サード | メイフィールド | 518 | -0.1 | -0.2 |
ショート | イグレシアス | 992 | -6.1 | -10.3 |
レフト | アプトン | 687 | -2.5 | -4.7 |
レフト | ゴセリン | 302 | -2.1 | -7.7 |
センター | マーシュ | 568 | 0.9 | 1.8 |
センター | ラガレス | 470 | -1.5 | -4.7 |
ライト | ウォード | 368 | -3.2 | -10.0 |
ライト | イートン | 587 | -0.1 | 1.0 |
ポジション | 選手 | イニング | UZR | UZR /150 |
※同一ポジションで出場300イニング以上の選手。プホルス、イグレシアス、イートンは他球団での成績も含む。
※UZRは同じポジションの選手間のみ比較できます。レフトのアプトンとセンターのラガレスのUZR/150が-4.7だからといって、同等の守備力だというわけではありません。
今回使用したUZRでは対象外となるキャッチャーの守備力については、配球や盗塁阻止力よりも、フレーミングが失点に影響を与えると言われています。
フレーミングも含めて、カートスズキとスタッシの比較をしているこちらの記事もご覧ください。
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