大谷翔平への四球攻めが差別ではない理由 | のびたのセミリタイア

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大谷翔平への四球攻めが差別ではない理由

差別 スポーツ

9月22日、23日のアストロズとの2試合で大谷は、10打席7四球そのうち敬遠2つと、ほとんど勝負してもらえませんでした。

これについて一部メディアでは、本塁打王を争うゲレーロJr.やペレスなら勝負してもらえたはずで、大谷がアジア人だから差別されたと報じました。(>> 大谷翔平「四球攻め」で本塁打王遠のく 「メジャーは差別主義」と酷評の声

しかし私は、ライバルよりも大谷の四球が増えているのは差別ではなく、まっとうな理由によるものだと考えています。

ボール球で攻められるのは大谷だけではない

たしかに大谷の四球率は高く、8月以降は18.5%とライバルと比べても特に高いです。

四球率 大谷 ゲレーロ ペレス
開幕~9/23 14.0% 12.6% 4.2%
8月~9/23 18.5% 10.6% 7.9%

しかし、これは大谷だけが勝負を避けられているのではなく、大谷がしっかりボール球を選んだ結果だと考えられます。

データサイトBaseball Savantでは全打者に投じられたコースを確認することができます。(数値の単位は%)

<開幕から9/23までの大谷への配球>

大谷への配球

<開幕から9/23までのゲレーロJr.への配球>

ゲレーロJr.への配球

<開幕から9/23までのペレスへの配球>

ペレスへの配球

 

ストライクゾーンから外れた数字を足していくとわかりますが、大谷だけでなく、ゲレーロJr.とペレスもボール球で攻められています。

ボール球率 大谷 ゲレーロ ペレス
開幕~9/23 56.3% 53.7% 57.9%
8/1~9/23 57.1% 54.2% 62.4%

ボール球で攻められるのは強打者の証なのです。

その中でも特に大谷の四球率が高いのは、早打ちせずにボール球をしっかり見極めた結果だといえます。

ちなみに大谷よりもペレスのほうがボール球で攻められています。

それでもペレスの四球率が高くない理由は、ペレスが積極的にスイングしていくメジャー屈指のフリースインガーだからです。

>> ロイヤルズのペレスは脅威のフリースインガーでホームランを量産

大谷の後ろの打者とゲレーロJr.の後ろの打者に差がある

また、大谷の四球が多くなるのは、大谷の後ろの打者が弱いという理由もあります。

9月23日時点で大谷の後ろを打つことが多いのはゴセリンですが、ゲレーロJr.の後ろを打つビシェット、ペレスの後ろを打つベニンテンディと比べると打力が劣ります。

9/23時点 打率 本塁打 打点 OPS 出塁率 長打率
ゴセリン .266 7 43 .697 .322 .375
ビシェット .291 26 98 .804 .338 .465
ベニンテンディ .276 16 67 .758 .319 .439

特にゲレーロJr.の所属するブルージェイズ打線は、メジャートップクラスの得点力を誇っています。

たとえゲレーロJr.が素晴らしい打者であっても、四球で歩かせてしまうと、後続の打者に簡単に返されてしまう危険があります。

一方、大谷の所属するエンゼルスは後半戦メジャー最下位クラスの得点力であり、大谷を四球で歩かせても、後続の打者が全く怖くありません。

大谷の後ろにトラウトがいれば状況は変わったはずですが、トラウトが2021年に戻ってくることはなく、大谷への四球が増えるのは当然なのです。

>> エンゼルスのトラウトのケガからの復帰はいつ?復帰は2022年

大谷に打たせなければエンゼルスに勝てる

冒頭の記事では、「優勝確実の状況でアストロズが勝負を避けるのは不可解」とありました。

「不可解なのはアストロズがアメリカン・リーグの西地区で首位を独走し、地区優勝がほぼ間違いない状況なのに、大谷との勝負を露骨に避けたことです。大谷と本塁打王を競う選手がいるわけでもない。ゲレーロJr.、ペレスと対戦した際に同じ攻め方をするかといったら疑問ですね」

 

しかし、メジャーでは同じ地区優勝でも、勝率によってポストシーズンでの対戦相手が変わります。

ポストシーズントーナメント

Wikipediaより一部抜粋)

たしかに9月23日時点でアストロズはア・リーグ西地区の優勝が確実ですが、勝率ではア・リーグ東地区首位のレイズに負けています。

アストロズにとって9月の試合は消化試合ではなく、勝利に徹するのは当然です。

そして、大谷を抑えればエンゼルスには勝てます。

下のグラフは月ごとのエンゼルスの勝率と大谷のOPS(出塁率+長打率)です。

エンゼルスの勝率と大谷のOPS(9月23日時点)

 

2016年にはナショナルズのハーパーが1試合7打席で6四球1死球を記録しました。

このときの対戦チームのカブスはその4連戦でハーパーに13四球と勝負を避け、4連勝を飾りました。

ちなみに当時のカブスの監督は現エンゼルス監督のマドンです。(>> 物議醸すハーパーへの四球攻め 知将マドン監督の視線は10月?)

 

メジャーでも勝利のために強打者と勝負を避けるのは珍しいことではありません。

9月24日時点でエンゼルスは、ポストシーズン進出のかかっているマリナーズとの連戦を2つ残しており、大谷が勝負を避けられる場面は続くと予想されます。

たしかにボール球で攻められるのは見ていてつまらないです。大谷が勝負されずにホームラン王を逃すのは悔しいです。

しかし、ここまで見てきたように大谷への四球が増えるのは不可解なことではありません。

冒頭の記事のように、大手メディアが露骨に対立を煽るような記事を書くのはいかがなものかと思います。

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