※本記事は2022年に書いた記事ですが、表とランキングに吉田正尚(2023年)を追加しました。本文は更新はしていないので、少し古い文章に感じるかもしれません。
日本人野手メジャーリーガーの1年目の打撃成績を比較しました。
ただ、単純に打率などを比較しようとすると、2022年のような打低のシーズンの選手は不利です。
そこで打率+(AVG+)、出塁率+(OBP+)、長打率+(SLG+)などの「+」系の指標を利用します。
これらはリーグやシーズンが違っても比較できるように調整された指標で、リーグでの傑出度を表します。(球場の違いによる差も補正)
リーグ平均は100で、例えば打率+が110ならばリーグ平均よりも10%高い打率であるという意味です。(「OPS+」のWikipedia)
<その他の用語>
- OPS=出塁率+長打率。打率などよりも得点との相関が高く、簡易的に計算できる指標。
- wRC+=1打席あたりに生み出す得点力の傑出度を表す、打撃の総合指標。前述した+系と同じく、メジャー平均を100として、例えばwRC+が110ならばリーグ平均よりも10%高い得点力であるという意味。(「wRC+」のWikipedia)
- ISO=長打率ー打率。長打率には単打も含まれるので、単打を除外することで純粋な長打力をはかることができる指標。
- WAR=打撃、走塁、守備での勝利に対する総合的な貢献度を測る指標。選手の総合評価。1試合ごとに数字が積み上がる。本記事ではFangraphs社のものを「fWAR」、Baseball Referenceのものを「rWAR」とし、その2つの平均を「平均WAR」とする。(「WAR」のWikipedia)
※データはFangraphsのものを利用。
日本人野手メジャー1年目の打撃成績
表は縦と横にスクロールできます。項目をクリックすると並べ替えられます。
名前 | 年 | 歳 | 試合 | 打席 | 打率 | 本 | 打点 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 打率+ | 出塁率+ | 長打率+ | OPS+ | ISO+ | wRC+ | fWAR | rWAR | 平均WAR |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
イチロー | 2001 | 27 | 157 | 738 | .350 | 8 | 69 | .381 | .457 | .838 | 131 | 114 | 106 | 126 | 66 | 124 | 6.0 | 7.7 | 6.9 |
新庄剛志 | 2001 | 29 | 123 | 438 | .268 | 10 | 56 | .320 | .405 | .725 | 100 | 94 | 92 | 90 | 80 | 90 | 1.7 | 1.8 | 1.8 |
田口壮 | 2002 | 32 | 19 | 19 | .400 | 0 | 2 | .471 | .400 | .871 | 150 | 139 | 95 | 135 | 0 | 146 | 0.4 | 0.3 | 0.4 |
松井秀喜 | 2003 | 29 | 163 | 695 | .287 | 16 | 106 | .353 | .435 | .788 | 107 | 106 | 102 | 109 | 92 | 109 | 0.2 | 2.3 | 1.3 |
松井稼頭央 | 2004 | 28 | 114 | 509 | .272 | 7 | 44 | .331 | .396 | .727 | 101 | 97 | 91 | 89 | 74 | 90 | 0.4 | 1.0 | 0.7 |
井口資仁 | 2005 | 30 | 135 | 582 | .278 | 15 | 71 | .342 | .438 | .780 | 104 | 103 | 103 | 104 | 102 | 105 | 3.3 | 2.8 | 3.1 |
中村紀洋 | 2005 | 31 | 17 | 41 | .128 | 0 | 3 | .171 | .179 | .350 | 48 | 50 | 42 | -7 | 32 | -12 | -0.4 | -0.8 | -0.6 |
城島健司 | 2006 | 30 | 144 | 542 | .291 | 18 | 76 | .332 | .451 | .783 | 106 | 98 | 103 | 103 | 99 | 105 | 2.8 | 2.6 | 2.7 |
岩村明憲 | 2007 | 28 | 123 | 559 | .285 | 7 | 34 | .359 | .411 | .770 | 105 | 106 | 97 | 105 | 83 | 107 | 3.1 | 2.2 | 2.7 |
福留孝介 | 2008 | 31 | 150 | 590 | .257 | 10 | 58 | .359 | .379 | .738 | 96 | 106 | 89 | 89 | 77 | 91 | 1.4 | 0.6 | 1.0 |
西岡剛 | 2011 | 26 | 68 | 240 | .226 | 0 | 19 | .278 | .249 | .527 | 88 | 86 | 61 | 48 | 15 | 45 | -1.5 | -1.8 | -1.7 |
青木宣親 | 2012 | 30 | 151 | 588 | .288 | 10 | 50 | .355 | .433 | .788 | 111 | 109 | 105 | 109 | 94 | 112 | 2.4 | 3.2 | 2.8 |
川﨑宗則 | 2012 | 31 | 61 | 115 | .192 | 0 | 7 | .257 | .202 | .459 | 75 | 80 | 49 | 34 | 6 | 35 | -0.3 | -0.4 | -0.4 |
田中賢介 | 2013 | 32 | 15 | 34 | .267 | 0 | 2 | .353 | .267 | .620 | 103 | 109 | 67 | 81 | 0 | 88 | -0.1 | 0.3 | 0.1 |
大谷翔平 | 2018 | 23 | 114 | 367 | .285 | 22 | 61 | .361 | .564 | .925 | 114 | 113 | 135 | 151 | 167 | 149 | 2.7 | 2.7 | 2.7 |
秋山翔吾 | 2020 | 32 | 54 | 183 | .245 | 0 | 9 | .357 | .297 | .654 | 99 | 110 | 70 | 74 | 30 | 81 | 0.3 | 0.8 | 0.6 |
筒香嘉智 | 2020 | 28 | 51 | 185 | .197 | 8 | 24 | .314 | .395 | .709 | 81 | 98 | 95 | 99 | 115 | 100 | 0.3 | 0.3 | 0.3 |
鈴木誠也 | 2022 | 27 | 111 | 446 | .262 | 14 | 46 | .336 | .433 | .769 | 108 | 107 | 109 | 116 | 110 | 116 | 2.0 | 2.0 | 2.0 |
吉田正尚 | 2023 | 29 | 140 | 580 | .289 | 15 | 72 | .338 | .445 | .783 | 117 | 107 | 108 | 109 | 95 | 109 | 0.6 | 1.4 | 1.0 |
※2020年は年間60試合の短縮シーズン。
※大谷のWARは野手のみのもの。大谷の1年目の投手WARはfWARが1.1、rWARが1.3。
日本人野手メジャー1年目の比較
以下では時代を越えて選手の成績を比較することができる「+」系の成績で、各項目上位5位までをランキングにしました。
ただし、打席数が100打席未満の選手(田口壮19打席、田中賢介34打席、中村紀洋41打席)は除きます。
打率ランキング(打率+)
- イチロー 131(打率.350)
- 吉田正尚 117(打率.289)
- 大谷翔平 114(打率.285)
- 青木宣親 111(打率.288)
- 鈴木誠也 108(打率.262)
1年目から首位打者を獲得したイチローが際立っています。
ランキング外も含めて多くの日本人選手が1年目の打率+はメジャー平均の100を上回っていました。
出塁率ランキング(出塁率+)
- イチロー 114(出塁率.381)
- 大谷翔平 113(出塁率.361)
- 秋山翔吾 110(出塁率.357)
- 青木宣親 109(出塁率.355)
- 鈴木誠也 107(出塁率.336)、吉田正尚 107(出塁率.338)
イチローが1位ですが、イチローは四球が少ないので打率に比べると傑出度は低いです。
メジャーで苦戦したイメージの強い秋山が意外にも3位に入りました。
長打率ランキング(長打率+)
- 大谷翔平 135(長打率.564)
- 鈴木誠也 109(長打率.433)
- 吉田正尚 108(長打率.445)
- イチロー 106(長打率.457)
- 青木宣親 105(長打率.433)
大谷は1年目から高い長打率を誇っていました。
長打率には単打も含まれるということもあって、打率が高い選手が多くランクインしています。
パワーランキング(ISO+)
- 大谷翔平 167
- 筒香嘉智 115
- 鈴木誠也 110
- 井口資仁 102
- 城島健司 99
1年目の大谷の長打力はリーグでも上位でした。
2位が筒香なのが意外に感じます。
ただ、日本人選手は5位の城島でもISO+が99でメジャー平均を下回る結果となり、パワーで苦戦していることが分かります。
総合打撃力ランキング(wRC+)
- 大谷翔平 149
- イチロー 124
- 鈴木誠也 116
- 青木宣親 112
- 松井秀喜 109、吉田正尚 109
大谷の1年目は打席数が少ないですが、1打席あたりの打撃力ならばメジャートップ10に入るほどでした。
まとめ
- 大谷、イチローはメジャー1年目からメジャーでも優れた打撃力。
- 打低シーズンで数字はパッとしないが、+系の成績を見れば鈴木誠也の打撃力は日本人野手の中でもかなりメジャーに通用している。
- 青木の打撃力も地味にメジャーで通用していた。30歳からの挑戦でありながら、メジャー6年間ずっとメジャー平均ぐらいの打撃力は持っていた。
- 松井秀喜の1年目はメジャー平均をやや上回る程度で、他の日本人と比較してもすごくない。ただ、多くの日本人のキャリアハイが1年目となる中で松井は2年目以降に適応して成績を向上させている。
そして、全く通用しなかったイメージの筒香や秋山ですが、実は筒香の長打力や秋山の出塁率は他の日本人よりも好成績でした。
何となく近年メジャーとの差が広がったような印象がありますが、最近挑戦している選手も昔の選手たちとそれほど違いはないかもしれません。
むしろ鈴木誠也の1年目の打撃成績は大谷、イチローに次ぐような良いものです。
日本人の壁となっている2年目以降の適応次第では「日本人野手もやれる」という希望を与えてくれるかもしれません。
コメント
球場補正はしないんてすか?
当時のシアトルのセーフコは
MLB屈指の右打者不利の球場でした
+系のスタッツは球場補正ありです。
記事中にOPS+のWikipediaをのせていますが、例えばOPS+の計算式は
OPS+ = 100 x (出塁率÷リーグ出塁率+長打率÷リーグ長打率-1)÷パークファクター補正
となっています。