日本では打順を考えるときに、
- 1番:俊足で打率が高い
- 2番:小技が上手く、つなげる
- 3番:巧打と長打を併せ持つ
- 4番:最強打者
というイメージがあります。
一方、統計に基づくセイバーメトリクスを重視したメジャーでは、「4番最強打者」の考え方は古く、現在は「2番最強打者」が主流と言われています。
(※2番最強打者の考え方はWikipediaで簡潔に説明されています)
たしかに、2021年にほとんどの指標でチームトップの大谷の打順は、2番であることが多いです。
しかし、2021年のメジャー30球団の打順別の成績を調べてみると、「3番最強打者」というほうが正しい結果となりました。
メジャーは3番が最強打者
セイバーメトリクス界隈では、打撃の総合指標として「wRC+」がよく利用されます。
wRC+は平均的な打者を100としたときに、打席あたりにどれだけ多くの得点を生み出したかをパーセントで表します。
例えばwRC+が120ならば、平均的な打者よりも20%多く得点を生み出せる打者だということです。
2021年8月22日時点で、メジャー30球団の打順別のwRC+の平均は、以下のようになりました。
<打順別wRC+>
- 1番:110.8
- 2番:109.6
- 3番:115.3
- 4番:111.3
- 5番:99.6
- 6番:95.4
- 7番:89.1
- 8番:79.0
- 9番:52.7
3番打者が最もwRC+が高いので、現在のメジャーでは3番が最強打者だと言えます。
ただ、これだと各打者の特徴が見えず、また、wRC+というほとんどの人が計算方法を知らない指標で説明されても納得できないと思います。
もう少し一般的な打撃指標で見てみます。
メジャーの打順別の打撃成績
まず、2021年8月22日時点での、メジャー30球団の打順別の打撃成績の平均を出しました。
その成績を150試合あたりに換算した結果(※)、下表のようになりました。
(※レギュラーの選手は、1シーズンで約150試合の出場になるため)
<30球団の打順別成績(150試合あたり)>
打順 | 打率 | 本 | 打点 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 盗塁 | 三振率 |
1番 | .264 | 21 | 65 | .337 | .436 | .772 | 14 | 19.8% |
2番 | .259 | 21 | 70 | .334 | .434 | .768 | 9 | 21.0% |
3番 | .258 | 24 | 82 | .341 | .453 | .794 | 6 | 22.1% |
4番 | .253 | 25 | 87 | .329 | .453 | .782 | 5 | 23.2% |
5番 | .244 | 20 | 74 | .317 | .415 | .733 | 6 | 23.1% |
6番 | .241 | 18 | 65 | .314 | .405 | .718 | 6 | 23.5% |
7番 | .236 | 15 | 58 | .304 | .390 | .694 | 5 | 24.0% |
8番 | .224 | 12 | 48 | .299 | .357 | .656 | 5 | 24.9% |
9番 | .201 | 7 | 29 | .268 | .315 | .582 | 4 | 29.2% |
打順 | 打率 | 本 | 打点 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 盗塁 | 三振率 |
スマホからだと見えないかもしれませんが、カラースケールにするとこのようになります。(赤が良い数字、青が悪い数字)
ここから見えてくる特徴は、以下です。
- 1~4番に良いバッターが固まり、5~9番に向かってだんだん悪くなるように打者が並ぶ
- 1番、2番は打率・出塁率が高く、盗塁ができ、それなりに長打力もあるバッター
- 3番、4番は長打率が高く、ホームランを打てるバッター
- 3番はほとんどの成績がトップクラスの最強打者
こうしてなじみのある打撃指標で並べてみると、最初に見たwRC+の数字もしっくりくるのではないでしょうか。
ちなみに、上記の結果は30球団を対象としたため、DHのないナ・リーグも含まれています。
したがって、9番打者が極端に悪い成績になっています。
ただ、これほど極端ではなくとも、ア・リーグでも9番打者の成績が一番悪いことには変わりませんでした。
また、ア・リーグではDHを置けるので、良い打者が1人増える結果、1~5番までが良い成績になります。
<ア・リーグ15球団の打順別成績(150試合あたり)>
打順 | 打率 | 本 | 打点 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 盗塁 | 三振率 |
1番 | .264 | 20 | 66 | .333 | .428 | .761 | 14 | 19.5% |
2番 | .253 | 21 | 71 | .324 | .419 | .743 | 10 | 21.6% |
3番 | .250 | 25 | 81 | .333 | .448 | .781 | 5 | 22.8% |
4番 | .255 | 26 | 88 | .326 | .455 | .781 | 5 | 23.8% |
5番 | .244 | 21 | 76 | .317 | .422 | .739 | 6 | 23.6% |
6番 | .238 | 18 | 65 | .308 | .403 | .711 | 7 | 23.7% |
7番 | .232 | 18 | 59 | .296 | .400 | .697 | 5 | 24.5% |
8番 | .227 | 13 | 50 | .293 | .366 | .659 | 7 | 25.2% |
9番 | .220 | 9 | 41 | .288 | .345 | .634 | 6 | 25.9% |
打順 | 打率 | 本 | 打点 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 盗塁 | 三振率 |
今回の結果は、メジャー30球団(またはア・リーグ15球団)を平均したものなので、あくまでも一般的な傾向と考えてください。
実際には個々の選手の成績にはもっと差が出るはずで、その特徴をとらえて各球団が戦略を持って打順を組み立てることになります。
ポジション別でも似たようなことをやっているので、ご覧ください。
コメント
とても参考にならました、
メディアもSNSでも月並みなホームラン王や記録願望への煽りやコメントとしか見受けられず、ここで痒いところに手が届いた感覚です。
大谷の今欲しい情報に関して、使えるとは、この主の事。
ありがとうございます。
個人ブログなので扱える範囲は狭いですが、なるべく皆さんに楽しんでいただける記事を書きたいと思っています。