メジャーリーグの各審判のストライク、ボール判定の誤審率をまとめている「Umpire Scorecards(アンパイア・スコアカード)」について紹介します。
英語ですが、見方さえわかればそれほど難しくありません。
Twitter版「Umpire Scorecards」の見方
Twitter版のUmpire Scorecardsは、各試合のストライク、ボール判定の誤審率について分析結果を画像とともにツイートしています。
ツイートは、毎日試合終了後の日本時間23時30分ごろにされます。
Umpire: Ryan Wills
Final: Angels 7, Astros 2#GoHalos // #LevelUp#LAAvsHOU // #HOUvsLAA pic.twitter.com/OaGPvUigb3— Umpire Scorecards (@UmpScorecards) April 20, 2022
画像の上の部分は、審判の名前と日付とスコアなので見たまんまです。
真ん中から下の部分は、大きく分けて以下の4つの項目があります。
- Accuracy(正確性)
- Consistency(一貫性)
- Favor(ひいき度)
- Missed Calls(誤審の詳細)
Accuracy(正確性)
左側の「Overall Accuracy」は、審判のストライク・ボール判定の「正確性」を表しています。
上の画像では、ストライク、ボールがコールされた球(=打者が見逃した球)全171球のうち、164球が正しくコールされたので、正確性は96%となります。(全審判の平均は94%)
Consistency(一貫性)
右側の「Overall Consistency」はストライクゾーンの「一貫性」を表しています。
例えば、ストライクゾーンが外に広い審判がいたとして、その試合中、一貫して外に広ければ選手も対応できますが、外が広かったり狭かったりしたら大変です。
一貫性は、本当のストライクゾーンではなく、「EUZ(審判固有のストライクゾーン)」でのジャッジの正確性から計算されます。
上の画像では、全171球のうち、その審判固有のゾーン内なのにボールと判定されたのが6球、審判固有のゾーン外なのにストライクと判定されたのが5球だったので、一貫性は94%となります。(全審判の平均94%)
EUZ(審判固有のストライクゾーン)
EUZはストライクゾーンに重なるように表示された赤くゆがんだゾーンのことです。
その審判のその試合での実際のストライク、ボールの判定結果から、その審判がストライクと考えていると推定されるストライクゾーンとなります。
Favor(ひいき度)
真ん中の「Overall favor」は審判のストライク・ボール判定の「ひいき度」を表しています。
どちらかのチームにだけ有利(または不利)な判定をしていないかのスコアです。
上の画像では、エンゼルス(LAA)が-0.14、アストロズ(HOU)が-0.96なので、両チームに不利なジャッジをしていますが、差し引きで0.82だけエンゼルスに有利な判定をしていたことになります。
ここでの0.82とは得点の期待値を表します。
期待値なので実際に入った得点とは必ずしも関係はありませんが、ひいき度はスコアが低いほど中立なジャッジであったという意味になります。
ひいき度の計算の考え方
ひいき度の計算方法は、セイバーメトリクス(統計)的な考え方を含み、少しややこしいです。
例えば、2アウト満塁でカウント3ボール2ストライクの場面を考えてみます。
この時、ストライクの判定ならば3アウトでイニングが終了します。もちろん得点は入りません。
ボールの判定ならば押し出しで1点が入り、なおも2アウト満塁でカウント0-0となります。2アウト満塁でカウント0-0からの得点期待値は、統計的には0.74点となっています。
したがって、ストライクならば0点、ボールならば1点の得点と0.74点の得点期待値が生じるので、この場面(2アウト満塁カウント3ボール2ストライク)での誤審による得点への影響は1.74点ということになります。
Missed Calls(誤審の詳細)
最後に画像の下側の説明です。
左側「All Missed Calls」で本当のストライクゾーンで誤審された全投球が図示されています。
赤い丸がストライクと誤審されたもの、緑の丸がボールと誤審されたものです。
丸の中に「2.1」、「2.2」と書かれたボールは得点期待値に影響を与えた誤審ベスト3になります。(期待値への影響なので実際の得点に影響を与えたとは限りません)
「2.1」「2.2」は同率で2位という意味です。
右側の「Impactful Missed Calls」で、その詳細が書かれています。
例として「2.2」を翻訳すると、
- 7回裏
- 投手ループ、打者ブレグマン
- 2アウト、ランナー1塁
- カウント1-2の場面でストライクがボールと誤審された
となります。
その下の左側の「Called Ball Accuracy」はボール球の判定の正確性を示します。
ボールと判定された124球のうち2球は本当はストライクなので、ボール球の正確性は98%となります。(全審判の平均は97%)
同様に、右側の「Called Strike Accuracy」はストライクの判定の正確性を示します。
ストライクと判定された47球のうち5球は本当はボールなので、ストライクの正確性は89%となります。(全審判の平均は88%)
Web版「Umpire Scorecards」でボブ・デービットソンの誤審率を調べる
「Umpire Scorecards」はTwitterだけでなく、Webサイト版もあります。
誤審率のデータが試合、審判、チームなどに分けて集計されています。
英語ですが、前述したTwitter版の見方がわかればWebサイトのほうも理解できると思います。
ここでは例として、2006年の第1回WBCの日本vsアメリカ戦で、日本が敗れる原因となった「世紀の大誤審」をしたボブ・デービットソンのMLBでの誤審率を調べてみます。
Umpire Scorecardsの「Umpires」のページに行きます。
ボブ・デービットソンは現在は審判を引退しているので、対象範囲の日付をクリックして開始を2015年からにします。
「Umpire」をクリックして並べ替えをし、「Bob Davidson」を探します。
ボブ・デービットソンがいました。正確性(Accuracy)が89.4%、一貫性(Consistensy)が92.2%という低い数値が表示されています。
そのまま「Bob Davidson」をクリックしてみます。
パーセンタイルランクが表示されています。
これは全審判の中で、正確性(Accuracy)が下位2%、一貫性(Consistensy)が下位6%という意味です。
やっぱりボブ・デービットソンはひどい審判だったということがわかりました。
このような感じで、今見ている審判の判定が何かおかしいと感じたら、Web版「Umpire Scorecards」で過去の誤審率を確認できます。
審判の名前の確認方法
審判の名前の確認方法です。
MLB.comのスコアページから見たい試合を選択し、「Box」をクリックします。
下のほうに「Umpires」の項目があり、その中の「HP(ホームプレート)」が球審の名前です。
以上、MLBの誤審率を確認できる「Umpire Scorecards」の説明でした。
メジャーでは審判の誤審率が誰からも簡単に見れるようになっているので、審判もなかなか大変です。
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