※追記。記事の最後に、5月23日時点での先発時と中継ぎ時のリリースポイントの比較を追加しました。
2023年からアスレチックスでプレーしている藤浪の成績が悪いです。
4月25日時点で4試合に先発し、15イニングで24失点、被安打19、与四球12、与死球3と散々な結果で、中継ぎに配置転換となりました。
藤浪の悪いところはもちろんコントロールで、なぜコントロールが悪いかというとリリースポイント(ボールを放す位置)が安定しないからです。
これはメジャーに行く前からいろんな人がずっと指摘し続けてきたことなので、日本の多くの野球ファンが知っていることだと思います。
ただ、どんな感じでリリースポイントが安定していないのかはわからない人も多いと思うので、スタットキャストのデータをもとに、藤浪のリリースポイントがどうなっているのかをグラフで簡単にまとめました。
※本記事で使用するデータは2023年の開幕から4月23日までのものです。
藤浪のリリースポイント
開幕から4試合の藤浪の全球のリリースポイントです。
縦軸が高さで、横軸はキャッチャーから見た水平方向の位置で左側ならマイナス、右側ならプラスです。(つまり右投手ならマイナス、左投手ならプラス)
球種別だとこうなります。
全球種をのせると色がごちゃごちゃになって見づらいので、よく投げる球種だけをのせています。
正直、この2つの図だけを見てもよくわからないので、他の投手のリリースポイントはどうなっているのかを見ていきます。(スケールは同じに合わせています)
他の選手(コール、デグロム、ヒーニー)のリリースポイント
コールのリリースポイント
ヤンキースのエースで開幕から絶好調のゲリット・コールのリリースポイントです。
点が密集しているので、コールのリリースポイントは藤浪より安定しています。
球種ごとにリリースポイントが少し違いますが、同じ球種はだいたい同じリリースポイントで投げることができていそうです。
デグロムのリリースポイント
続いて、(ケガしなければ)現役最高の投手とも呼び声が高いレンジャーズのジェイコブ・デグロムのリリースポイントです。
コールよりもさらに点の集まりが小さくなっています。
どの球種も安定して同じリリースポイントで投げられているようです。
デグロムは精密機械のようなコントロールとよく言われますが、それを象徴するかのようなリリースポイントの安定感で、あまりのすごさに私は若干引きました。
ヒーニーのリリースポイント
コール、デグロムとメジャーを代表する投手と藤浪を比較するのはあまりフェアではない気がします。
そこで、藤浪の先発失格が決定的となった4月22日の試合で相手チームの先発であったアンドリュー・ヒーニーのリリースポイントを見てみます。
ヒーニーは元エンゼルスで何年もローテーションを守った投手ではありますが、圧倒的な成績を残してきた選手ではありません。(2023年も4試合18.2回で防御率4.34)
(ヒーニーは左投手なので、横軸の値が逆になっています)
デグロムほどではありませんが、リリースポイントは安定しています。
ヒーニーはもともとコントロールが良い投手ですが、2023年は開幕から4試合で与四球率4.34と四球が多めです。
それでもリリースポイントはこのぐらいまとまっています。
まとめ
藤浪、コール、デグロム、ヒーニーのリリースポイントです。
<全球種>
<球種別>
藤浪のリリースポイントはバラついており、どの球種でも安定していません。
垂直方向だけでなく水平方向でも大きくバラついているので、腕の角度が変わったりしているのではないでしょうか。
今回は散布図なので球数が多ければ多いほど、グラフ上の広がりも大きくなる可能性がありますが、今回調べた4選手の球数は、藤浪298球、コール500球、デグロム401球、ヒーニー347球なので、藤浪に不利なわけではありません。
リリースポイントが安定しない理由は、単純にフォームが固まっていないのか、イップスなど精神的なものから来ているのかはわかりません。
ただ、フォーシームの回転数もメジャーワーストレベル(1865rpm)なので、コントロールが良くなれば成績が向上するとも限らない気がします。
スピードはあるので荒れ球だと上手い感じに抑えられたものが、まとまってしまうと絞りやすく、いわゆる棒球で打ちやすい球なのではないかと思います。
なかなか難しい状況ですが、中継ぎ転向で何かきっかけをつかんでメジャーに生き残ってほしいです。
追記。藤浪の先発登板時と中継ぎ登板時のリリースポイントの比較
5月23日時点で先発での球数が299球、中継ぎでの球数が283球と、同じぐらいの球数になったので、先発時と中継ぎ時のリリースポイントを比べてみました。
スタットキャストのデータはあとから変わることがよくあり、4月25日に本記事を作成したときにはスライダーとされていたものの多くが、カットボールに分類され直されています。
<先発(左)、中継ぎ(右)>
中継ぎになって1か月がたちましたが、リリースポイントはあまり変わっていないように見えます。
孤立しているような点が減ったように見えるので、とんでもない抜け玉は少なくなったのかもしれませんが、点の密集部分は広いままで、球種ごとで見てもバラバラです。
先発と中継ぎでの成績ものせておきます。(データはFangraphsのもの)
<2023年5月23日時点での先発、中継ぎの登板成績>
投球回 | 被安打 | 自責 | 被本 | 三振 | 四球 | 死球 | 球数 | |
先発 | 15.0 | 19 | 24 | 3 | 12 | 12 | 3 | 299 |
中継ぎ | 12.2 | 15 | 15 | 0 | 17 | 12 | 1 | 283 |
防御率 | WHIP | 被打率 | 長打率 | OPS | 三振率 | 四球率 | スト率 | |
先発 | 14.40 | 2.07 | .302 | .508 | .938 | 7.20 | 7.20 | 56% |
中継ぎ | 10.66 | 2.13 | .283 | .377 | .801 | 12.08 | 8.53 | 54% |
※スト率=ストライク率
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