過去のサイヤング賞の結果から重要となる成績、指標を検証【選考基準】 | のびたのセミリタイア

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過去のサイヤング賞の結果から重要となる成績、指標を検証【選考基準】

トロフィー スポーツ

※2022年のサイヤング賞争いについてはこちら。
>> 2022年ア・リーグのサイヤング賞のオッズ。大谷と候補者の成績比較

 

2021年後半戦に入り、投手・大谷翔平が絶好調です。

8月20日時点のVegas Insidersのオッズでは、ア・リーグのサイヤング賞部門で大谷が5位となりました。

その年の最優秀投手におくられるサイヤング賞は、記者投票で決まるので明確な選考基準があるわけではありません。

しかし、過去のサイヤング賞の受賞者の成績を見ることで、記者がどんな成績を評価するかの傾向を確認することができます。

以下では、2011年から2020年までのサイヤング賞の受賞者の成績から、重視される指標を見つけ、大谷に受賞の可能性があるのか探ってみたいと思います。

過去のサイヤング賞の受賞者の成績

ア・リーグとナ・リーグに分けて、受賞者の主要な投手成績を表にしました。

聞きなれない指標があるかもしれないので、最初に「FIP」「WHIP」「K/BB」「WAR」について簡単に説明します。知ってる人は読み飛ばしてください。

投手指標の簡単な説明

FIPは被本塁打、奪三振、与四球のみで投手を評価する指標です。

統計的にはフェアゾーンに飛んだ打球がヒットになるかアウトになるかは、味方の守備力も含めた「運」の要素が大きいとされています。

FIPは守備から独立した防御率とみなされており、数値も通常の防御率のように見ることができます。(Wikipedia)

K/BBは「奪三振÷与四球」のことです。

投手をFIPで評価しようとすれば、K/BBの数値が大きいほど優れていることになります。(Wikipedia)

WHIPは1投球回あたりに何人のランナーを出したかの指標です。

ランナーを出さないほうが良いのは明らかなので、イメージしやすい指標ですが、前述したように被安打には守備を含めた運の要素があります。

したがって現在は投手の評価にWHIPは使われないと言われています。(Wikipedia)

WARはさまざまな指標を組み合わせた総合指標で、控え選手が出場した場合と比べて、どれだけ勝ちに貢献したかを数値にしたものです。

例えばWARが4ならば、控え選手が出場した場合よりも4勝分のチームの勝ちが増えたという意味になります。

データサイトによって計算方法が違うため、Fangraphs社のWARはfWAR、Baseball referenceのWARはrWARと区別されることがあります。(Wikipedia)

ア・リーグ歴代サイヤング受賞者の成績

表の下段はリーグ内での順位です。

2020年:ビーバー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
8 1.63 77 2.07 0.87 122 5.81 3.3
1 1 2 1 2 1 3 1

※2020年は年間60試合の短縮シーズンです。

2019年:バーランダー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
21 2.58 223 3.27 0.80 300 7.14 7.4
1 2 1 4 1 2 1 3

2018年:スネル

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
21 1.89 180 2.94 0.97 221 3.45 7.1
1 1 14 5 2 5 15 1

2017年:クルーバー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
18 2.25 203 2.50 0.87 265 7.36 7.9
1 1 4 2 1 2 1 1

2016年:ポーセロ

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
22 3.15 223 3.40 1.01 189 5.91 4.7
1 5 4 2 2 8 1 9

2015年:カイケル

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
20 2.48 232 2.91 1.02 216 4.24 6.5
1 2 1 5 1 5 5 1

2014年:クルーバー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
18 2.44 235 2.35 1.10 269 5.27 8.1
1 3 3 1 6 2 6 1

2013年:シャーザー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
21 2.90 214 2.74 0.97 240 4.29 6.5
1 5 5 3 1 2 5 3

2012年:プライス

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
20 2.56 211 3.05 1.10 205 3.47 6.6
1 1 8 3 4 6 11 2

2011年:バーランダー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
24 2.40 251 2.99 0.92 250 4.39 8.6
1 1 1 4 1 1 4 1

ナ・リーグ歴代サイヤング受賞者の成績

表の下段はリーグ内での順位です。

2020年:バウアー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
5 1.73 73 2.88 0.80 100 5.88 3.0
4 1 6 5 1 2 3 2

※2020年は年間60試合の短縮シーズンです。

2019年:デグロム

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
11 2.43 204 2.67 0.97 255 5.8 8.0
17 2 3 2 2 1 4 1

2018年:デグロム

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
10 1.70 217 1.98 0.91 269 5.85 9.9
19 1 2 1 2 2 2 2

2017年:シャーザー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
16 2.51 200 2.90 0.90 268 4.87 7.2
4 2 7 2 1 1 3 1

2016年:シャーザー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
20 2.96 228 3.24 0.97 284 5.07 6.2
1 8 1 5 1 1 1 1

2015年:アリエータ

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
22 1.77 229 2.35 0.87 236 4.92 8.3
1 2 2 2 2 3 8 2

2014年:カーショウ

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
21 1.77 198 1.81 0.86 239 7.71 7.7
1 1 20 1 1 3 1 1

2013年:カーショウ

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
16 1.83 236 2.39 0.92 232 4.46 8.1
3 1 2 2 1 1 5 1

2012年:ディッキー

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
20 2.73 233 3.27 1.05 230 4.26 5.7
2 2 1 7 3 1 3 2

2011年:カーショウ

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
21 2.28 233 2.47 0.98 248 4.59 6.8
1 1 3 2 1 1 3 3

サイヤング賞で重要となる成績。勝利数、防御率、WHIP、WAR

2011年~2020年の10年間で、両リーグでサイヤング賞を取った計20人の選手のうち、何人が各指標でリーグ1位だったかをグラフにしました。(人数は延べ人数)

サイヤング投手のリーグ1位の投手成績

ア・リーグでは10年連続で最多勝利投手がサイヤング賞

サイヤング投手が最もリーグ1位を取った投手指標は、勝利数でした(14人)。

昔のように完投することが少なくなり、今では投手の勝利数は重視されない指標になったという声も多いので、これは意外な結果です。

もちろん、勝利はチーム力が大きく関係するので、単純に「勝利数が多いからサイヤング賞が取れた」とはならない可能性はあります。

それでも、大谷が所属するア・リーグでは、過去10年連続で最多勝利投手がサイヤング賞を取っています。

防御率やWHIPが評価され、FIPはあまり重視されない

勝利数以外では、WAR、WHIP、防御率が1位だった選手がサイヤング賞を取る傾向がありました。

選手の総合指標であるWARが重視されるのは納得ですが、今は投手の評価には使われていないとされるWHIPが重視されるのは意外です。

また、守備から独立した防御率であるFIPは、通常の防御率よりも評価されていません。

これはサイヤング賞が記者投票によるためだと思います。

防御率やWHIPはたしかに運の要素を含むかもしれませんが、事実として失点しない・ランナーを出さないというのは、特に観戦している場合には大きな印象を与えます。

過去の結果から言えば、防御率とWHIPが1位か2位になっていないと、サイヤング賞は厳しくなります。

<20人のサイヤング投手のうち、各指標でリーグ1位または2位だった人数>

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
15 16 9 11 17 14 6 16

2021年の大谷のサイヤング賞の可能性は低い

大谷がサイヤング賞を受賞する可能性は限りなく低いです。

それは年間162回という規定投球回に届かないためです。

先発のサイヤング投手は全員が規定投球回に到達

「イニングイーター」という言葉があるように、先発は多くのイニングを消化することが役割のひとつです。

「投球回」はサイヤング賞でそれほど重視されていないように感じますが、リーグ1位・2位でなくとも、受賞者全員が規定投球回に到達しています。(リリーフで受賞した選手は除く)

防御率のタイトルなどもそうですが、規定投球回を投げなければ受賞の資格がありません。

先発で規定投球回に到達できない選手が、そのシーズンで最高の投手かと言われるとどうしても違和感があります。

2021年のサイヤング賞争いのライバルの成績

大谷とア・リーグのライバル投手の成績です。(下段はリーグ順位

リン(ホワイトソックス)

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
11 2.69 157 3.32 1.07 176 3.91 5.4
14 (1) 20 (3) (4) 12 (6) 3

コール(ヤンキース)

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
16 3.23 181 2.92 1.06 243 5.93 5.6
1 3 5 2 2 2 1 2

レイ(ブルージェイズ)

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
13 2.84 193 3.69 1.05 248 4.77 6.7
5 1 1 8 1 1 3 1

大谷(エンゼルス)

防御率 投球回 FIP WHIP 奪三振 K/BB rWAR
9 3.18 130 3.52 1.09 156 3.55 4.1
29 (3) 38 (6) (4) 19 (9) 7

※()は規定投球回に到達していた場合の順位。

サイヤング賞はコールとレイの一騎打ちですが、レイが優勢です。

大谷はサイヤング賞争いからは完全に脱落しました。

リンも規定投球回には届かず、可能性は低いです。

>> 大谷翔平のMVPの可能性は?ア・リーグの他の選手との成績を比較

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